eラーニング研修でも、条件を満たせば人材開発支援助成金を活用できる可能性があります。ただし、「オンライン講座なら対象」「研修費がそのまま戻ってくる」というわけではありません。研修内容や対象者、受講方法、利用するコースなどを事前に確認しておくことが大切です。定額制のeラーニングも含め、社員教育に助成金を使うための条件や費用、申請の流れを整理します。
eラーニングにも人材開発支援助成金を使える
社員研修をeラーニングに切り替える場合でも、一定の要件を満たす訓練であれば人材開発支援助成金を利用できる可能性があります。大切なのは、オンラインか対面かよりも「誰に、何を、何のために学んでもらうのか」です。
社員がオンラインで受講する研修も対象になり得る
人材開発支援助成金は、事業主などが従業員に対して職務に関連した専門的な知識や技能を習得させるための職業訓練などを行った場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部などを助成する制度です。
対象となる訓練は教室で行う集合研修だけではありません。一定の要件を満たせば、パソコンやスマートフォンを使って受講するeラーニングも対象になり得ます。
たとえば、業務に必要なITスキルをオンライン講座で学ぶ、専門職の社員に新しい知識を身につけてもらうといった使い方が考えられます。
ただし、eラーニングサービスを契約しただけで助成されるわけではありません。企業が実施する社員教育として制度の要件を満たしていることが前提になります。
まず確認したいのは「研修内容」と「利用するコース」
人材開発支援助成金には複数のコースがあり、対象となる訓練や助成内容はそれぞれ異なります。
そのため、
- 誰が受講するのか
- どんなスキルを身につけるのか
- 業務とどのような関係があるのか
- どのくらいの期間・時間受講するのか
- どの助成コースを利用するのか
といった点を整理してから研修を選ぶ方がスムーズです。
「このeラーニングサービスは助成金対応と書いてあるから大丈夫」とサービス単位で判断するのではなく、自社が行う訓練が対象になるかという視点で確認する必要があります。
どんなeラーニング研修が対象になる?
eラーニングというだけでは、助成金の対象になるかどうかは決まりません。ポイントになるのは、社員の仕事に必要な能力を伸ばすための訓練として実施されているかどうかです。
業務に必要な知識やスキルを学ぶ研修が基本
対象を考えるときは、「その研修を社員の仕事にどう活かすのか」を整理すると分かりやすくなります。
たとえば、
- IT・デジタルスキル
- プログラミングやシステム関連の専門知識
- 業務で必要となる専門技術
- 新しい業務を担当するための知識・技能
- 事業展開や業務転換に必要となるスキル
などを学ぶeラーニングが候補になります。
一方、社員が自由に利用できる学習サービスを福利厚生として契約するといったケースでは、同じeラーニングでも考え方が変わります。
「社員教育に使っている」というだけではなく、職務に関連した訓練として制度上の要件を満たしているかを確認することが必要です。
動画を見るだけで判断せず、訓練としての要件を確認する
eラーニングには、講義動画を見るタイプ、教材を読みながら進めるタイプ、テストを組み合わせたタイプなど、さまざまな形式があります。
助成金を検討するときは、コンテンツの形式だけでなく、利用する助成コースで定められた訓練の要件を確認します。
特にeラーニングでは、通常の集合研修とは受講時間などの扱いが異なる場合があります。
そのため「10時間以上の動画があるから対象になるだろう」といった自己判断は避け、利用予定のコースについて厚生労働省が公開している最新の要件を確認してから研修を開始するのが確実です。
受講料や定額制サービスはどこまで対象になる?
助成金を利用する目的のひとつは、社員教育にかかる費用負担を軽くすることです。ただし、eラーニングに関連する費用がすべて助成されるわけではありません。「何に支払う費用なのか」を分けて考える必要があります。
eラーニングの受講にかかる経費が対象になる場合がある
対象となる訓練であれば、受講に必要な経費について助成を受けられる場合があります。
ここで注意したいのが、「eラーニングの導入費用」という大きなくくりで考えないことです。
たとえば、社員が外部のオンライン研修を受講するための費用と、自社専用のLMSを新しく構築する費用、受講用のパソコンを購入する費用では性質が違います。
助成金を前提に予算を組む場合は、
サービスの契約総額 → 対象経費になる金額 → 適用される助成率や上限 → 実際に見込める助成額
という順番で確認すると、実際の負担額を把握しやすくなります。
定額制のオンライン研修にも対応する仕組みがある
社員一人につき講座を一本購入するだけでなく、月額や年額で複数の講座を受講できる定額制のeラーニングサービスを社員教育に利用する企業もあります。
人材開発支援助成金では、こうした定額制サービスによる訓練を対象とした仕組みも設けられています。
定額制なら、IT、マネジメント、専門知識など複数の講座から社員ごとに必要なものを選び、継続的に学習させる運用もしやすくなります。
ただし、「定額制なら契約料金がそのまま助成対象になる」という意味ではありません。利用するコースの要件や対象となる訓練、経費の範囲などを確認したうえで申請する必要があります。
特に年間契約など金額が大きくなるサービスでは、契約してから助成対象かを調べるのではなく、導入を決める前に確認しておくことが重要です。
すべてのオンライン研修が対象になるわけではない
eラーニングを社員教育に使っていても、すべての研修や費用が助成されるわけではありません。特に注意したいのは、研修と仕事との関係、そして実際に助成対象として認められる経費の範囲です。
仕事との関連性が薄い学習には注意
人材開発支援助成金は、企業が従業員の職務に関連する知識や技能を身につけさせるための訓練を支援する制度です。
そのため、社員が好きな講座を自由に選んで視聴できる環境を用意しただけでは、想定していた訓練として扱われない可能性があります。
たとえば定額制サービスに数百本の講座があったとしても、大切なのは講座数の多さではありません。
「営業担当者にデジタルマーケティングを学んでもらう」「エンジニアに新しい開発技術を習得してもらう」など、誰に、何を、どの業務のために学ばせるのかを整理しておく必要があります。
自由に学べる福利厚生としてのeラーニングと、会社が計画して実施する職業訓練は分けて考えた方が分かりやすいでしょう。
サービス料金のすべてが助成されるとは限らない
もうひとつ気をつけたいのが、「30万円のeラーニングを契約したから、30万円が助成される」とは限らないことです。
利用するコースや企業規模、訓練内容などによって助成率や上限が異なり、契約に含まれる費用のすべてが対象経費になるとも限りません。
導入を検討するときは、サービスの料金だけを見るのではなく、
- 契約費用のうち何が対象経費になるのか
- どの助成コースを利用できそうか
- どの程度の助成額を見込めるのか
- 最終的な自社負担はいくらになるのか
まで確認しておくと予算を立てやすくなります。
助成金は社員教育を無料にする制度ではなく、条件を満たした研修費用などの負担を軽くする制度として考えるのが現実的です。
申請から受講、助成金受給までの流れ
人材開発支援助成金は、eラーニングを受講してから申請を考えるのでは遅い場合があります。対象者や研修内容を決め、必要な手続きを行ったうえで訓練を始めることが基本です。
研修を始める前に計画を作る
まず決めておきたいのは、誰にどの研修を受講してもらうのかです。
対象となる社員、研修内容、受講期間、利用するeラーニングサービスなどを整理し、利用したい助成コースの要件と照らし合わせます。
そのうえで、必要となる計画届などを準備します。
人材開発支援助成金ではコースによって必要な手続きや期限が定められているため、「研修を開始してから申請方法を調べる」のは避けた方が安全です。
eラーニングサービスを比較する段階で助成金の利用も検討し、申請準備と導入準備を並行して進めるとスムーズです。
eラーニングを実施する
必要な事前手続きが済んだら、計画した内容に沿って社員がeラーニングを受講します。
オンライン研修では、社員がそれぞれ違う時間や場所で受講するケースもあります。そのため、受講状況を後から確認できるようにしておくことが重要です。
誰が受講したのか、どの講座を修了したのかなど、申請に必要となる記録を残しながら進めます。
研修担当者がExcelなどで一から管理する方法もありますが、受講者が多い場合は、履歴や修了状況を管理できるeラーニングサービスを選ぶと運用負担を減らせます。
研修終了後に支給申請を行う
対象となる訓練を実施した後は、必要な書類をそろえて支給申請を行います。
ここで押さえておきたいのは、基本的に助成金を受け取ってから研修サービスを購入する仕組みではないということです。
企業側で研修費用などを負担し、訓練を実施したうえで支給申請を進めるため、導入時にはいったん必要な費用を支払える予算も考えておく必要があります。
また、申請期限や提出書類は利用するコースなどによって異なります。実際に利用するときは、厚生労働省や管轄の労働局が公開している2026年度の最新資料を確認して進めましょう。
受講記録と修了確認を残せる仕組みが重要
eラーニングは社員が好きな時間に受講しやすい反面、研修担当者から受講状況が見えにくくなります。助成金の申請を考えるなら、コンテンツの充実度だけでなく「受講したことを確認できる仕組み」もサービス選びの重要なポイントです。
誰が受講したのかを確認できるようにする
eラーニングを導入すると、社員ごとに受講する時間や進み方が変わります。
そこで管理したいのが、
- 誰が受講したか
- どの講座を受講したか
- いつ受講したか
- どこまで進んでいるか
- 修了しているか
といった情報です。
必要となる記録は利用する助成コースや訓練形式などによって異なるため、申請に必要な情報を事前に確認しておきます。
こうした記録は助成金のためだけに使うものでもありません。「申し込んだもののほとんど受講されていない」といった状態を把握できるため、通常の社員教育を運用するうえでも役立ちます。
サービスを選ぶときは管理機能も確認する
eラーニングを比較するときは、「何本の講座を見られるか」「どんな分野を学べるか」に目が向きがちです。
企業研修として使うなら、管理者側の機能も確認しておきたいところです。
受講者ごとの進捗を確認できるか、修了状況を管理できるか、必要な受講履歴を取得・保存できるか。こうした機能があれば、人数が増えても研修状況を追いやすくなります。
特に助成金を利用する場合は、申請時に必要な記録をどのように残せるのかまで確認してからサービスを選ぶと、導入後の管理がラクになります。
助成金を使いやすいeラーニングサービス
eラーニングサービスは、講座の分野や料金体系、受講管理の方法がそれぞれ異なります。助成金の利用を考える場合も、「助成金対応」という表示だけで選ぶのではなく、自社が行いたい研修に合うサービスかどうかを見ることが大切です。
定額制で幅広く学ばせたい場合
複数の社員にさまざまな講座を受講してもらうなら、定額制のeラーニングサービスが選択肢になります。
たとえば、AirCourseは、社員教育向けの動画研修を幅広く用意しているeラーニングサービスです。自社教材の配信にも対応しており、受講状況を管理しながら研修を進められます。
NetLearningも、企業向けに多数のオンライン講座を提供しており、人材開発支援助成金を利用する場合の案内を公開しています。
また、learningBOXのように、教材の作成・配信や受講履歴の管理を行えるLMSを活用する方法もあります。
定額制のメリットは、社員ごとに必要な学習を組み合わせやすいことです。ただし、契約しているだけで助成対象になるわけではありません。どの社員にどの訓練を受けてもらうのかを決め、利用する助成コースの要件を確認しておきます。
特定のスキルを集中して学ばせたい場合
社員全員に幅広い講座を提供するのではなく、特定の社員に専門スキルを身につけてもらいたい場合は、分野を絞ったオンライン研修も選択肢になります。
たとえば、インターネット・アカデミーでは、IT・Web・DXなどの研修を提供しています。企業研修について人材開発支援助成金を活用する場合の案内も公開されています。
このほか、TAC法人向け人材教育サービスなど、専門知識や資格、実務スキルを学べる研修サービスにもオンラインで受講できる講座があります。
こうした研修は、「DXを進めるために対象社員へデジタルスキルを学ばせたい」「特定職種の専門能力を伸ばしたい」といった、研修の目的と対象者が明確な場合に検討しやすくなります。
サービス会社の「助成金対応」だけで決めない
サービス会社が「人材開発支援助成金を利用できます」「助成金対象講座があります」と案内していることがあります。
これはサービスを探す際の参考になりますが、そのサービスを契約すれば必ず助成金が支給されるという意味ではありません。
実際の支給可否は、企業側の条件や受講者、研修内容、利用するコース、申請手続きなどによって変わります。
サービスを比較するときは、
- 自社が学ばせたい内容があるか
- 受講対象者を管理できるか
- 必要な受講記録を残せるか
- 助成金利用時に必要な情報を提供してもらえるか
- 自社の研修計画が制度の要件を満たすか
まで確認しておくと安心です。
サービス会社の案内を参考にしつつ、最終的には厚生労働省の最新資料や管轄の労働局で確認するのが確実です。
費用だけでなく研修の続けやすさで選ぼう
助成金を使えば、eラーニングによる社員教育の費用負担を軽くできる可能性があります。ただ、社員教育は一度研修を実施して終わるものとは限りません。導入時の安さと同じくらい、その後も無理なく続けられるかを見ておきたいところです。
助成金を使った後の運用も考えておく
助成金を利用してeラーニングを始める場合でも、翌年度以降は同じ条件で利用できるとは限りません。
導入前に、
- 助成金がなくても継続できる料金か
- 受講する社員が増えた場合に費用はどう変わるか
- 必要な講座を追加できるか
- 管理担当者の作業が増えすぎないか
- 受講状況を継続して確認できるか
といった点まで見ておくと、サービスを比較しやすくなります。
特に定額制サービスでは、契約したものの社員がほとんど利用していなければ、結果的に一人あたりの研修費が高くなってしまいます。
助成金で初年度の負担を抑えながら、実際の受講率や利用状況を見て、その後の契約を判断する方法もあります。
「安く導入できる」だけで選ばない
人材開発支援助成金を調べていると、どうしても「いくら助成されるのか」に目が向きます。
しかし、本来の目的は社員に必要な知識や技能を身につけてもらうことです。
研修内容、受講のしやすさ、管理機能、料金、サポート、社員の利用状況などを含めて比較したうえで、その中に助成金という判断材料を加えるくらいがちょうどよいでしょう。
**「助成金が使えるサービスを探す」のではなく、「自社に必要な研修を決め、その研修に助成金を使えるか確認する」**という順番にすると、eラーニング選びもシンプルになります。
よくある質問:
Q. eラーニングなら、どのサービスでも人材開発支援助成金の対象になりますか?
A. いいえ。サービス単位ではなく、実際に行う訓練の内容や対象者、利用する助成コースなどによって判断されます。「助成金対応」と案内されているサービスでも、自社の研修が必ず対象になるわけではありません。Q. 定額制・サブスク型のeラーニングも対象になりますか?
A. 対象になる可能性があります。人材開発支援助成金には定額制サービスによる訓練に対応した仕組みがあります。ただし、対象となる訓練や経費などの要件があるため、契約前に最新の支給要件を確認しておきましょう。Q. eラーニングを契約した後から助成金を申請できますか?
A. 研修を開始してから申請準備を始めるのは避けた方がよいでしょう。人材開発支援助成金では、訓練開始前に計画の作成や必要な手続きが求められる場合があります。助成金を利用する予定なら、eラーニングの選定段階から申請スケジュールを確認しておくのが安全です。



