「うちは法人相手だし、SNSは関係ない」──そう思い込んではいませんか?
でも本当にそうでしょうか?BtoB企業でも、発信の工夫次第で営業にも採用にも“信頼づくり”にもつなげられます。売り込まずに選ばれる企業になるための、今こそ見直したいSNSの使い方をまとめました。気負わず、気楽に読んでみてください。
知られていない = 存在していない
「うちの業界にSNSは関係ない」と思っていても、何も発信しないことで知られずに終わっている可能性があります。まずはその“機会損失”に気づくことがスタートラインです。
SNSは「うちには関係ない」と思われがち
製造業や法人向けサービスなどのBtoB企業では、「SNSは若い人向け」「一般消費者向けのもの」という印象を持たれていることが少なくありません。でも実際には、企業同士の取引でも、意思決定の前にSNSやWebで情報を調べる行動は当たり前になっています。
SNSは、直接売るための道具ではなく「選ばれる前提をつくる場」として考えると、BtoB企業でも活かし方はたくさんあります。
発信しないことで損しているかもしれない
SNSをやっていない企業は、「調べても何も出てこない会社」として扱われがちです。たとえ技術力があっても、社名で検索して出てくるのが古いコーポレートサイトだけだと、不安を感じる発注担当者もいます。
「どんな会社なのか」「どんな人がいるのか」「どんな実績があるのか」──それらが見える企業と見えない企業では、比較されたときの印象に差が出ます。
競合と比べられるとき、SNSが効いてくる
受注や商談の場面で、複数の候補が比較されることはよくあります。価格や仕様で大きな差がないとき、「発信内容から伝わってくる誠実さ」や「情報発信を継続している安心感」が、判断材料になることも少なくありません。
見られていないようで、見られている。それが今のBtoBの世界です。
SNSが“必要ない”と思いこんではいませんか?
知られていないという状況は、意外と深刻です。次は、なぜ今、SNSが必要になってきたのかを具体的に掘り下げていきます。
商談や問い合わせの“入り口”が変わってきた
法人向けのサービスでも、SNSやWeb経由で会社を知るケースは確実に増えています。昔は展示会、紹介、電話などが主な接点でしたが、今は「まず検索」が当たり前。
SNSアカウントがあることで、興味を持ってもらうきっかけが生まれます。営業のアプローチより先に「この会社、見たことある」「投稿読んでなんとなく印象がいい」という状態を作れれば、その後の商談もスムーズになります。
例:検索とSNSはセットで見られている
ある法人営業職の調査によると、BtoB購買の情報収集で「会社名を検索して公式サイトとSNSを両方チェックする」という行動が主流になってきています。とくに中小企業では、SNSの更新頻度や投稿内容がそのまま「会社の温度感」として受け止められやすい傾向があります。
“発信していない会社”は、候補から外れることもある
特に新規の取引では、発注者が「信頼できる会社かどうか」をSNSやWeb上の情報で判断することが珍しくありません。だからこそ、まったく情報が出てこない会社は候補から外れやすくなります。
「知られていないから、そもそも声がかからない」という事態は、SNSをやらないことで起きやすくなっています。
展示会や紹介だけに頼ると、広がらない
もちろん、展示会や紹介営業がすぐに不要になるわけではありません。でも、それだけに頼っていると、ターゲットが限られてしまいます。
SNSを通じて会社の考え方や実績を少しずつ外に出していくことで、これまで接点のなかった業種・地域・層からも認知される可能性が広がります。
参考:展示会とSNSの比較
接点のつくり方 | 主な特徴 | 継続性 |
---|---|---|
展示会・紹介 | 対面・一時的・物理的制限あり | 一過性 |
SNS発信 | 非対面・常時公開・広がりやすい | 長期継続型 |
展示会で会った相手がSNSで投稿を見てくれていた──そんな逆の流れも実際には起きています。つまり、SNSが“補助”ではなく“前提”になってきているのです。
「強み」が伝われば選ばれやすい
どれだけ良い技術やサービスを持っていても、黙っていたら誰にも伝わりません。SNSは“中身を見せる”ためのツールとして、自社の魅力や姿勢を表現する場として活用できます。
専門性や現場の雰囲気が信頼のきっかけになる
BtoBの取引では、商品そのものよりも「誰が、どんな姿勢で取り組んでいるか」が判断材料になることがあります。SNSでは、製品の仕上がりやプロセス、現場でのやりとり、社員の一言など、ちょっとした日常が信頼の根拠になります。
難しいことをシンプルに伝える工夫
技術や業務内容が専門的であっても、言葉を選べば一般の人でも理解できます。たとえば、「この配線ミスが起きると機器が止まります」といった現場目線の説明は、専門知識がなくても「丁寧な仕事をしている会社だ」と感じてもらえるきっかけになります。
企業の「中の人」が見えると、安心感が生まれる
顔が見えない会社よりも、人の温度が伝わる会社のほうが印象に残ります。社員の日常や仕事風景、こだわっているポイントなど、無理に格好つけずに自然体で発信することが、SNSでは強みになります。
発信を続けると「見たことある会社」になる
SNSは即効性のある販促ツールではありませんが、続けることで「この会社、よく見るな」と思ってもらえる存在になります。たとえば1か月に1回の投稿でも、数か月積み重なれば信頼の材料になっていきます。
継続は信頼を生む
更新が3年前で止まっているSNSは、「今この会社は動いているのか?」という不安を生みます。一方で、細くても長く続けているアカウントは、見る人に安心感を与えます。更新頻度よりも「辞めないこと」が大事です。
顔と名前をセットで覚えてもらえる機会になる
SNS上では「企業名+担当者名」で覚えられることも多くなります。これはBtoBにおいて、初回アプローチ時のハードルを下げる効果があります。すでに“知っている”と感じてもらえることで、商談もスムーズになります。
SNSが“会社の顔”になる時代
SNSに投稿する内容が、会社の印象を左右します。自社サイトに載せていないようなリアルな情報も、SNSでは発信しやすく、受け取る側も“その会社らしさ”を感じやすくなります。
採用にも営業にもつながる
求職者は、会社名を見たらSNSやWebで調べるのが普通です。採用情報だけでは伝わらない職場の雰囲気、社員の空気感、社長の人柄などが投稿から伝われば、応募のきっかけになります。また、発信された技術紹介や導入事例が営業資料として使われることもあります。
SNSは「選ばれる理由」を育てる場所
BtoBでは価格や納期だけではなく、「誰に頼むか」が重要になります。SNSで会社の価値観や姿勢が見えていると、「この会社なら任せられる」と思ってもらえる確率が上がります。
SNSは若い人向け…って思い込んでない?
SNSは若者が使うもので、うちの業界には合わない──そう考えている企業も少なくありません。でも、それはかなりもったいない誤解かもしれません。
SNSは消費者向けだけじゃない
たしかにBtoCのように「すぐ買ってもらう」導線はSNSと相性が良いです。ただ、BtoBでも「相手に知ってもらう」「印象を残す」という目的なら、SNSの役割は非常に大きくなります。取引先も、担当者も、人間です。日常的にSNSを見ています。
実際に見られているのは「商品」ではなく「姿勢」
企業がどんな考えで事業に取り組んでいるか、現場の様子に信頼が持てるか──それを伝えるにはSNSは非常に効果的です。いかに商品が優れていても、「その会社が信用できるか」が見えなければ、商談には進みません。
よくある失敗パターンとその理由
SNSを始めた企業が最初にやりがちなのが、「やってみたけど反応がない」「何を投稿すればいいかわからない」「続かない」という3つの壁です。
「映える投稿」に縛られてしまう
BtoCの成功事例に影響されて、“バズる投稿”や“インパクトのある写真”を狙ってしまうと、BtoBでは浮いてしまうことがあります。重要なのは、共感や納得を得られるような“誠実な発信”です。派手でなくても、「丁寧な会社だな」と感じられる内容がむしろ好まれます。
投稿に一貫性がなくて伝わらない
今日は社内ランチ、明日は機械の紹介、来週は社長の一言──こうした投稿が悪いわけではありませんが、方向性がバラバラだと、見ている側にとって印象が定まりません。「この会社はこういう価値観で仕事しているんだな」と思ってもらえるよう、発信内容には一定の軸が必要です。
フォロワー数が全てではない
BtoCとは違い、BtoBのSNS活用では「何人に届いたか」よりも「誰に届いたか」が大切です。100人に広く見られるより、1人のキーマンに届くほうが、商談につながる可能性は高いからです。
拡散よりも“共感”を重視した発信に
専門的でニッチな内容でも、見た人が「まさにうちの課題」と感じれば、DMや問い合わせに直結することがあります。BtoBのSNSは“数”ではなく“質”を意識して使うのが成功のコツです。フォロワーが少なくても、信頼が伝われば意味があるのです。
数より届き方。ニッチ企業のためのSNS設計
「フォロワーが少ないから意味がない」と思われがちなSNSですが、BtoBでは“誰に届いたか”のほうがずっと重要です。届き方の仕組みを理解しておくと、数字にとらわれず自分たちらしいSNS活用ができます。
誰か1人に届けば、それで十分なことがある
BtoBでは、意思決定者や現場担当者など、1人の反応が商談や問い合わせにつながることがあります。SNSは「広く拡散させるもの」というイメージが先行しがちですが、目的が違えばゴールも変わります。
数千人に届かなくてもいい理由
1000人の見込みが薄い人に見られるより、1人のキーマンに深く刺さる発信のほうが、実際の取引に近づきます。SNSは“数より質”という考えで動かしたほうが、現場の手応えにもつながります。
見ている人は意外と多い
「いいね」はつかなくても、投稿を見ている人はいます。後日「SNSで見ました」と言われる経験は、実際に多くの企業がしています。反応がない=見られていない、というわけではありません。
思ってもないところで届いている
SNSは投稿したその瞬間だけが勝負ではありません。検索や共有、回覧によって、思わぬところで見つかる導線がいくつもあります。
検索からたどり着かれるケース
X(旧Twitter)やnote、Instagramなどの投稿は、Google検索に引っかかることがあります。記事タイトルや投稿文にキーワードがあれば、SNS経由ではなく検索から流入することもあります。
関係者による社内回覧や転送
たとえばA社の担当者が投稿を見て、社内の別部署に「この会社、参考になりそう」と転送した──というパターンも珍しくありません。SNSの特性上、直接のつながりがなくても情報が“横に”広がっていきます。
業界キーワードで見つけてもらいやすくなる
専門用語や技術用語、業界の動向などを盛り込んだ投稿は、同じ業界の担当者や研究者などの目に留まりやすくなります。投稿を“タグ”として考えれば、SNSは小さな検索エンジンにもなります。
情報がない会社は選ばれにくい
営業や採用の現場では、「SNSをやっているかどうか」が比較対象になることもあります。特に同業他社が情報発信をしている場合、自社が何も発信していないと、印象として見劣りしてしまいます。
信頼の入り口として見られるSNS
最近では、企業の公式SNSを見ることが、名刺交換後の“挨拶代わり”になっているとも言えます。フォローされなくても、投稿を見てもらえるだけで十分に意味があります。
「やっていない」ことがリスクになる場合も
業界によっては、「SNSがない=中の様子がまったく見えない」という印象を持たれることもあります。特に採用や協業を検討する相手にとっては、情報が見える企業のほうが安心感を持たれます。
“うまく話そうとしないこと”が共感を生む
SNSで共感される投稿をしようとするあまり、企業らしさが失われてしまうことがあります。大事なのは、きれいな言葉や映える写真ではなく、「この会社の考え方、なんか好きかも」と感じてもらえる“素の部分”です。
会社らしさをどう表現するか
投稿のテーマや言葉選びに、会社らしさが出ます。まずは「普段どんな話をお客様にしているか」「社内でよく話題になることは何か」を振り返ってみると、ヒントが見つかります。
発信内容のヒントになる問い
- なぜそのサービスを作っているのか?
- 現場で大事にしていることは?
- 過去の失敗から何を学んだか?
- 社内でよく言っている言葉は?
こうした“会社の内側の声”こそが、他社との差を生み出す材料になります。
ノウハウだけじゃなく“姿勢”も伝える
BtoB企業がSNSで発信する内容というと、ノウハウや製品紹介に偏りがちです。でも、「どんな思いでその仕事をしているか」「お客様とのやりとりで大切にしていること」など、“人と人の間にあるもの”を伝えることで、印象に残りやすくなります。
技術×人のバランスが鍵
たとえば「この検査工程を徹底している理由」といった内容は、単なる説明ではなく、会社の姿勢を表すことになります。「丁寧な会社」「信頼できそう」という印象につながるのです。
投稿は“あとで使える資産”になる
SNSの投稿はその時だけのものと思われがちですが、うまく作れば営業資料や提案時の裏付けとしても使えます。
実際に使える投稿例
- 導入実績やお客様の声 → 提案時の裏付け資料に
- 技術のこだわり紹介 → 営業トークの根拠に
- 社内の取り組みや理念 → 採用面談時の会社説明に
ストックされていく投稿は、“小さなプレゼン資料”の集まりとも言えます。手間をかけて作った内容は、営業チームや採用担当とも共有して、会社全体の発信力として活かしていけます。
SNSが縁をつなぐ
直接の営業では届かない相手に、自社を知ってもらえるのがSNSの強みです。ここでは実際に「知られていなかった会社」が、情報発信をきっかけに声をかけられた事例をご紹介します。
専門分野の投稿が業界の話題になったケース
ある産業機器メーカーでは、業界向けに設計思想や開発プロセスを詳しく紹介したブログ記事をnoteに投稿していました。記事は一見すると“地味”なものでしたが、X(旧Twitter)で同業者の目に留まり、そこから複数の業界アカウントに共有され、記事の内容に対する問い合わせが増えました。
技術を発信すると、理解者が増える
記事では単に「うちの製品は高性能です」とは言わず、「なぜこの設計になったか」「どんな現場課題に向き合ってきたか」を丁寧に書いていたため、同じ現場課題を抱える技術者や研究者から「この考え方は参考になる」と評価されました。自社の技術をしっかり言語化することで、業界内の信頼を獲得した一例です。
写真とコメントが、設計士の心に届いた例
建材を扱う会社がInstagramで施工例や使い方のアイデアを地道に投稿していたところ、それをたまたま見た設計事務所の担当者が興味を持ち、直接問い合わせにつながったという話もあります。
専門性より“使っている風景”が刺さった
この会社が行っていたのは、施工現場での様子や実際の利用シーンをわかりやすく伝えること。特別な編集もせず、実際の現場をそのまま切り取ったような投稿が「リアルで参考になる」と共感を呼びました。投稿は誰に向けて書いているかが明確で、同業や発注者にとって“ちょうどいい距離感”で届いていたのが印象的です。
毎月の更新がじわじわ成果を生んだ事例
とある製造業の企業では、毎月1〜2回のペースでXに現場紹介やお客様対応エピソードなどを投稿していました。1年近く継続した結果、投稿の内容に共感した企業から「一度話を聞かせてほしい」というDMが届き、後に商談に進んだという報告があります。
地味でも続けると“見つかる機会”が増える
担当者は「最初の半年はほとんど反応がなかったけれど、気づいたら『ずっと見てました』という人が現れた」と語っており、SNSの効果は“瞬間的”ではなく“積み重ね”によって育つものだと実感したそうです。投稿が信頼の蓄積になり、知らない誰かに届いていたことが形になった事例です。
発信する会社だけが信頼を育てていく
SNSは、売るためではなく「この会社、いいかも」と感じてもらうための場所です。企業の規模や業種に関係なく、見てもらえる努力をしている会社のほうが、つながるチャンスを得られています。
押し売りではなく、自然と伝わるほうが強い
商品やサービスをガンガン売り込むよりも、「どんな会社か」「どういう姿勢で仕事をしているか」が伝わっている会社のほうが、結果として問い合わせや相談を受けやすくなります。SNSでは“売る”よりも“伝える”という意識が大切です。
興味を持った相手が自分から動ける設計に
SNSに投稿があると、見た人はそこから会社名を検索し、Webサイトや資料をチェックしてくれます。何も投稿していないと、相手は興味を持っても判断材料がないまま離れてしまいます。つまり、発信していることが“入口”になります。
続けている会社は、それだけで信頼される
定期的に更新されているSNSアカウントを見ると、「この会社はちゃんとしていそう」と感じる人は多いです。逆に、3年前の投稿で止まっていると、「今も活動しているのかな?」と不安を抱かせる要因になります。
無理なく続けられる形をつくる
投稿は週1回でも、月に数回でも構いません。更新の頻度ではなく、「止まらないこと」が何より大事です。会社として“動いている姿”を見せることが、外部の信頼につながります。
見つけてもらえる会社になるために
どれだけ素晴らしいサービスを持っていても、知られなければ選ばれません。ニッチな企業ほど、発信の機会を自分たちで作っていく必要があります。
発信が“未来の誰か”との接点をつくる
SNSは、今すぐ売上になるとは限りません。でも、まだ会ったことのない人に見つけられる可能性を広げてくれる道具です。だからこそ、情報を出し続けることに意味があります。静かに続けることで、確実にチャンスは増えていきます。