配信サービスの多くはオンデマンドで好きな時に視聴できますが、アベマは今も番組表を用いたテレビ番組風の形式を続けています。便利さが優先される時代に、なぜあえて「時間に合わせて観るスタイル」を残しているのでしょうか。本記事では、ライブ配信とVOD配信化のあいだにある“番組放送型”の強みをわかりやすく解説します。
なんで今どき「テレビ風」？
オンデマンド視聴が当たり前になった今でも、番組表形式で配信を続けるサービスがあります。その背景には、ただの懐古ではなく、視聴者にとっての新しい便利さや心地よさがあります。
動画視聴の当たり前が変わった
かつてはテレビが情報と娯楽の中心でしたが、今はスマホやPCから手軽に動画を選んで観られる時代になりました。ニュースやドラマ、アニメまで、自分の好きな時間に自分のペースで視聴できることが自然になっています。
視聴デバイスの多様化
スマホ・タブレット・PC・テレビアプリといった複数の端末が日常に浸透したことで、動画は「いつでもどこでも楽しめるもの」になりました。総務省の調査によると、2023年時点でインターネットを通じて動画を視聴する人の割合は全世代平均で8割を超えています。
時間に縛られない便利さ
録画の必要もなく、見逃し配信やアーカイブで追いかけられる仕組みが整ったことで、視聴の自由度はかつてないほど高まりました。これが「オンデマンド全盛」と言われる背景にあります。
配信サービスの中で浮く「番組表形式」
そんな状況の中で、あえて「番組表」を持つ形式は独特に見えます。オンデマンド中心のサービスに慣れている人にとっては、「なぜわざわざ時間に合わせるのか？」と不思議に映るはずです。
番組表がもたらす流れ
番組表があると、視聴者は「次に何が放送されるのか」を自然に意識します。これは動画を選ぶ手間を減らす効果があり、配信をテレビ感覚で楽しむことができます。
自動再生による没入感
番組が切れ目なく進んでいくことで、視聴者は「選ぶ」より「観続ける」方向に流れやすくなります。この仕組みが滞在時間の増加や習慣化につながります。
オンデマンド全盛期にあえて違う道を選んだ理由
オンデマンドで自由に観られることが当たり前になっても、番組表形式が続いているのには理由があります。そこには視聴者側と運営側の双方にとっての狙いがあります。
視聴スタイルが多様化した今の状況
配信サービスが一般化したことで、利用者の視聴スタイルは大きく広がりました。
主な視聴スタイルの違い
| 視聴スタイル | 特徴 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| オンデマンド | 好きな時に選んで視聴 | 自由度が高い、見逃しがない | 選ぶ手間がかかる、集中しにくい |
| ライブ配信 | リアルタイムで視聴 | 臨場感、イベント性がある | 時間に縛られる |
| 番組表形式 | 放送スケジュールに沿って視聴 | 選ぶ手間がない、習慣化しやすい | 観たい番組に時間を合わせる必要がある |
このように、便利さだけでは解決できない“視聴の好み”が存在しています。
選択肢が多すぎて逆に迷う視聴者心理
オンデマンドサービスは作品数が豊富である一方で、視聴者が「何を観ようか」と悩む時間が増えやすいという課題があります。いわゆる「選択肢疲れ」です。
選択肢疲れの実態
調査によると、動画配信サービス利用者の約3割が「観たい作品を選ぶのに時間がかかる」と回答しています。特に仕事や学業の合間に動画を観たい人にとって、探す時間は大きなストレスになります。
番組表が解決する部分
番組表があると、視聴者は「決まった時間に決まった番組を観る」だけでよく、選ぶ負担を軽減できます。これはテレビ的な気楽さをそのままデジタルに持ち込んだ仕組みと言えます。
テレビ形式を採用することで解決できること
番組表形式は、ただ不便さを引き継いでいるのではなく、現代の配信環境に適応しています。
習慣視聴をつくる
毎日同じ時間に番組を放送することで、視聴者が自然とその時間にアクセスするようになります。これはオンデマンドでは作りにくい「習慣化効果」です。
広告モデルとの相性
番組の合間に広告を挟むスタイルは、放送型の仕組みと相性が良く、広告主にとっても価値が高まります。結果的にサービスの収益化にもつながります。
コンテンツの見せ方を最適化
同じVOD作品でも、番組表に組み込むことで「イベント性」や「特集感」が演出され、ただ並べるよりも訴求力が高まります。
リアルタイム配信には“みんなで観る”ワクワク感がある
同じ時間に視聴するからこそ得られる体験があります。リアルタイムの配信は、一人で観ているのに仲間と一緒に盛り上がっているような感覚を作り出します。
同時視聴だからこそ生まれる一体感
リアルタイム配信は、同じ瞬間を共有する特別さを感じさせます。
例えばスポーツ中継や音楽ライブを観ていると、自宅にいながらも「多くの人と同じ体験をしている」安心感があります。
体験を共有する心理的効果
人は同じものを同じタイミングで体験すると「一体感」や「仲間意識」を感じやすいと言われています。これが配信にも当てはまり、結果的にサービスへの愛着にもつながります。
コメントやリアクションの存在
配信サービスの多くはコメント機能やスタンプ機能を備えています。視聴者同士が同時に反応を示すことで、画面越しでもコミュニティ感覚が生まれます。
番組表があることで習慣的にアクセスしやすい
番組表形式は、視聴習慣をつくるのに効果的です。時間が決まっているからこそ「次も観よう」と思いやすくなります。
習慣化によるリピーター効果
同じ時間に配信されると、視聴者はその時間を自然に意識するようになります。これは日常生活に組み込まれるきっかけとなり、リピート利用につながります。
“ながら視聴”との相性
番組表形式は「とりあえずつけておく」という使い方にも合います。選ばなくても流れてくるので、家事や作業の合間でも利用しやすいスタイルです。
リアルタイム配信とSNSで広がる熱量
同時視聴はSNSとの相性が抜群です。配信中にハッシュタグ付きの投稿が集中し、話題が一気に拡散するケースは少なくありません。
SNSが生む拡散効果
同じ時間に多くの人が感想を発信することで、トレンド入りや口コミ効果が期待できます。これにより視聴者が増えるサイクルが生まれやすくなります。
視聴者同士の交流が加速
リアルタイムで盛り上がった感想や意見をSNSで共有することで、視聴者同士の距離が縮まり、新しいコミュニティが生まれることもあります。
でも、自由視聴に比べてちょっと不便
リアルタイム配信や番組表形式には魅力がある一方で、不便さを感じる瞬間もあります。視聴者や運営側が注意したい点も押さえておきましょう。
時間に縛られるリスク
自由に観られるオンデマンドと違い、決まった時間に合わせる必要があります。生活リズムに合わない場合、視聴を断念することもあります。
見逃しのストレス
仕事や予定が重なったとき、観たかった番組を逃してしまうことがあります。見逃し配信やアーカイブが用意されていない場合、視聴者の満足度は下がりやすいです。
視聴者が離脱しやすいシーン
リアルタイム配信は、途中に興味のない内容が挟まると離脱が発生しやすいという特徴があります。
コンテンツの流れに左右される
番組表に沿った配信では、好みと合わない番組も含まれます。その時間帯を避けて視聴しなくなる人も一定数います。
運営側が抱えるオペレーション負担
リアルタイム配信は、準備や運営にも労力がかかります。オンデマンドのように一度アップロードすれば終わり、というわけにはいきません。
システムと人員の両方が必要
番組編成を管理する仕組みや、リアルタイムでの配信チェックなど、運営体制にコストがかかります。これは小規模な運営者にとっては負担になることもあります。
トラブル時の即時対応
リアルタイムである以上、配信トラブルが起きたら即座の対応が求められます。安定した配信環境を保つには技術面のバックアップも欠かせません。
番組表や自動再生で“つい観ちゃう”仕掛け
動画を選んで視聴するのではなく、流れに身を任せることで自然と視聴が続く仕組みがあります。番組表や自動再生は、視聴者を疲れさせずに長く楽しませるための大きな工夫です。
番組編成が視聴をリードする
番組表形式は「次に何が来るか」が見えるため、視聴の流れをサービス側がコントロールできます。視聴者は選ばずとも、自然と編成のリズムに沿って観ることになります。
テーマごとのまとまりが効果的
番組編成にテーマ性を持たせると、視聴者は「次も観てみよう」と思いやすくなります。アニメ枠やニュース枠などジャンルをまとめて並べることで、違和感のない流れを作り出せます。
“特集”感で引き込む
連続した時間枠を使って特定ジャンルを特集すれば、視聴者はイベントのような感覚で楽しめます。これにより、1本の動画では終わらない長い視聴時間を作ることが可能です。
自動再生が作る「止まらない体験」
自動再生機能は、視聴者の手を止めることなく次のコンテンツへと誘導します。これにより「選ぶ」より「観続ける」体験に変わります。
選択の負担を減らす仕組み
人は選択肢が多すぎると迷いやすくなります。自動再生があると、考えずに流れに任せることができ、ストレスが軽減されます。
ながら視聴との相性
家事や作業中に視聴している場合、次の番組が自動で始まるのは便利です。視聴者が意識しなくてもコンテンツが続くことで、滞在時間が自然と伸びます。
VODをライブ配信風に見せる工夫
もともとアップロードされたVOD作品も、見せ方次第で「ライブ配信っぽさ」を演出できます。
編成に組み込むことで生まれるライブ感
通常のVODを番組表に組み込むと、「あえてこの時間に観る意味」が生まれます。これがイベント的な体験につながります。
カウントダウン演出や告知
配信前に「あと◯分で開始」といった演出を取り入れると、リアルタイム性を強調できます。これにより観る側の期待感が高まり、集中度が増します。
視聴者をつなぎとめる演出も
長く観てもらうには、大きな仕掛けだけでなく細やかな工夫も欠かせません。ちょっとした演出やデザインで「もう少し観よう」と思わせることができます。
視聴者が次を待ちたくなる流れづくり
コンテンツをつなぐ構成にこだわると、視聴者は次への期待を持ちながら観続けやすくなります。
引き込み効果を持たせる構成
前の番組の最後に次の番組の予告や関連情報を挟むと、自然と「次も観てみよう」という流れができます。
時間を意識させるテクニック
「次はこの後すぐ」など、時間を感じさせる言葉を使うと、視聴者はその場にとどまりやすくなります。
番組と番組をつなぐ小さな演出
番組間の“つなぎ”がスムーズだと、違和感なく次へ移れます。
転換時の短い映像やジングル
切り替え時に短い映像や音を差し込むと、視聴体験にリズムが生まれます。テレビのCM前後でよくある工夫ですが、配信でも応用できます。
間延びを防ぐ工夫
番組と番組のあいだが空きすぎると離脱の原因になります。短いコメント映像や予告を挟むことで、視聴者を離さずに次へ導けます。
使いやすさを意識したデザインの工夫
配信画面のデザインや操作性も視聴継続に直結します。
視聴者目線のUI設計
「次に観られる番組」や「おすすめ枠」を画面上にわかりやすく表示すると、選ばなくても自然に目に入ります。
操作を最小限にする導線
番組を探す操作やスキップ操作を極力減らすことで、ストレスのない視聴が可能になります。ボタン配置やメニューの位置も重要です。
エンタメ業界で番組型配信が広がる？
番組表形式はニュースやドラマだけではなく、エンタメの分野でも幅広く活用されています。リアルタイム性や「イベント感」を演出する点で、さまざまなシーンで取り入れられています。
音楽ライブを番組風に届けるケース
音楽ライブは「同じ瞬間を共有したい」というニーズが強いジャンルです。配信でも番組型を取り入れることで、ただの録画配信とは違う体験が生まれます。
カウントダウンで期待感を演出
ライブ開始前にカウントダウンを入れると、視聴者は待ち時間から気持ちが高まり、ライブならではの熱気を感じやすくなります。
セットリストを番組表に置き換える工夫
「次にこの曲が流れる」という編成を提示すると、視聴者はテレビ番組を観るように安心して楽しめます。
スポーツ観戦を配信で再現するケース
スポーツはリアルタイム性が特に重要なコンテンツです。結果を事前に知ってしまうと面白さが半減するため、配信でも番組型が活きます。
ハイライトを組み合わせた編成
リアルタイムの試合に加え、過去の名場面や選手のインタビューを挟み込むことで、テレビ的な「特集番組」感が出せます。
試合進行に合わせた解説や実況
リアルタイム配信に実況や解説を合わせることで、会場にいるような臨場感を再現できます。
展示会やイベントで使われるケース
展示会や大型イベントでも、番組型配信の形式が採用されることがあります。来場できない人に対して「会場にいる感覚」を届ける工夫です。
タイムスケジュールを公開して誘導
展示ブースを回るのと同じ感覚で、番組表を見ながら気になる枠を選んで視聴できます。
休憩枠やトーク枠でメリハリをつける
イベント配信の合間にゲストトークやパネルディスカッションを挟むことで、長時間でも飽きにくい構成になります。
アベマがテレビ形式を続ける理由
オンデマンドが主流の中でも、あえてテレビ形式を続けるのには明確な狙いがあります。視聴者側の利点と、サービス運営側の強みの両方を考えた選択です。
視聴者の体験価値が高まるから
番組型配信は、視聴者に「選ばなくても楽しめる」という安心感を与えます。
選択肢に悩まない便利さ
大量のコンテンツから選ぶ必要がなく、気軽にアクセスするだけで番組が流れてくるのでストレスがありません。
同時視聴による一体感
「みんなが同じ時間に観ている」という感覚は、オンデマンドでは得にくい体験です。
サービス運営上の強みになるから
番組形式は、運営する側にとっても利点があります。
広告モデルとの相性の良さ
番組編成に合わせて広告を差し込めるため、自然に収益化につなげやすくなります。
視聴時間を引き延ばせる
自動再生や編成の流れで視聴者を長く留めやすく、結果としてサービスの価値を高める効果があります。
ネット時代でも「番組風」が生き残る理由
オンデマンドが便利であっても、「番組風」には他にはない強みがあります。
習慣視聴を生み出せる
決まった時間に配信されることで、視聴者が生活リズムの一部として取り込みやすくなります。
イベント性を演出できる
配信にスケジュール性や演出を持たせることで、特別感を作り出せます。これが番組型が長く支持される理由のひとつです。
