3DVRが変える公共施設運営──低コストで利用率を上げる

3DVR

こんにちは。株式会社ネクフルです。

設備は整っているのに、案内が不十分で活用されていない──そんな公共施設は意外と多くあります。3DVRを使えば、説明の手間を減らしながら、利用前の下見や施設紹介にも活用できます。ここでは、映像制作の観点から、3DVRをどう活かせるかを具体的に整理していきます。施設管理の改善を考える方に向けた、実践的なヒントをまとめました。

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利用されていない施設が意外と多い理由

どんなに設備が揃っていても、うまく伝わっていなければ使われません。実際に、多くの公共施設が「知られていない」「使い方がわかりづらい」などの理由で、活用されきれていない状況があります。このセクションでは、施設側が抱える悩みと、利用者側とのすれ違いを整理していきます。

誰もが知っている場所とは限らない

案外「存在が知られていない」ことが多い
住民向けに作られた施設でも、場所や内容が浸透していないケースは少なくありません。とくに郊外や地方では、広報手段が限られていて情報が行き届いていないこともあります。
イベントや講座が開催されていても「もっと早く知っていれば行ったのに」という声が出ることもあり、潜在的な利用者との接点を作れていないことが原因です。

初めての人にとって“中の様子がわからない”
建物の外観だけでは、何ができる施設なのかが判断しづらい場合があります。たとえば「○○センター」といった名称だけでは内容が伝わらず、結局使われないままになってしまうことも。

管理する側の手が足りない

すべての案内を人の手で行うには限界がある
受付や館内案内、イベント説明など、現場のスタッフに求められる業務は多岐にわたります。大規模な施設ならともかく、少人数体制で運営している場所では、「忙しくて案内に手が回らない」というのが実情です。

パンフレットや掲示物だけではカバーしきれない
紙ベースの情報提供は今も多く使われていますが、「見ない」「わかりづらい」という声も少なくありません。掲示物に頼りきった案内では、施設の魅力や活用方法を伝えきるのが難しくなっています。

情報が伝わらないまま時間だけが過ぎていく

イベントも展示も“気づかれないまま”終わることがある
せっかく力を入れて企画した展示やイベントも、そもそも「来てくれる人が少ない」と感じるケースがあります。広報や案内の仕組みが整っていないと、施設そのものの価値が埋もれてしまいます。

「行ったことがないから行きにくい」心理もある
施設の存在は知っていても、初めての場所には不安がつきものです。「どんな雰囲気なのか」「どこに何があるのか」などが事前にわかっていないと、足を運ぶきっかけが生まれません。結果として、常連の人だけが利用するような“閉じた空間”になってしまうこともあります。

負担が偏りがちな施設運営の実情

公共施設の現場では、「案内ができる人」がいないと成り立たない構造が多く見られます。このセクションでは、なぜ“効率化”という視点が求められるのかを掘り下げていきます。

スタッフ1人にかかる業務が多すぎる

現場の人手不足はもはや前提条件
公共施設の多くは、最低限の人員で回しているのが実情です。
特に平日の日中など、来館者は少ないものの「いつでも対応できる人」が必要とされる場面が多く、非効率になりがちです。

案内業務が“人に依存している”構造
常駐スタッフがいなければ説明ができない、利用方法をその場で都度説明している──こうした属人的な運営体制は、継続的な負担となります。ベテラン職員がいないと案内できないという事例も見られます。

利用者が必要な情報を得られないまま終わることも

「聞けばわかる」が前提の空間設計は危うい
利用者が自由に動けるように設計されていない空間では、案内役の不在が“何もわからない”という体験に直結します。
その場で質問できる人がいないと、ただ施設内を歩いて帰るだけということもあり、利用体験の質にも影響します。

高齢者や子ども連れにとってハードルが高くなる
表示がわかりにくかったり、どこに何があるのかが把握しづらい施設は、特に高齢者や小さなお子さんを連れた利用者にとってハードルが高くなります。聞きづらい雰囲気や人が足りていない空間では、「また来たい」と思われにくくなってしまいます。

情報提供の仕組み自体が古くなっていることも

「デジタル化」とは名ばかりの運用も多い
たとえば、施設の紹介ページがPDFのみだったり、スマートフォンで閲覧しづらい設計になっているなど、「一応Webにはある」というだけで終わっている例も少なくありません。

実際の活用状況が見えにくい
紙の来館者アンケートや受付カウンターでの口頭確認だけでは、利用実態の把握も困難です。効率的な運営に必要なフィードバックも得られず、改善の手が打ちにくくなります。

案内がなくても伝わる工夫、3DVRの可能性

スタッフがつきっきりで説明しなくても、施設の魅力をしっかり届ける方法があります。スマホで手軽に体験できて、利用前の不安を減らせる。それが3DVRの強みです。このセクションでは、利用者にとってのわかりやすさと、運営側の手間を軽くする設計のヒントを紹介します。

スマホがあればすぐ見られる手軽さ

専用機材がいらないのは強み
3DVRというと「ゴーグルが必要?」という印象を持たれがちですが、最近のサービスはスマホやタブレット、PCのブラウザだけで体験できるものが主流です。スマホを横にするだけで、360度空間をスワイプしながら自由に見渡せます。

現地に行かなくてもイメージできる
現地に足を運ぶ前に、どんな雰囲気かを体験できることで、心理的なハードルがぐっと下がります。たとえば、初めての利用者や高齢者、小さなお子さんを連れた方でも、事前に中の様子がわかると「行ってみよう」と思えるきっかけになります。

スマホ対応の3DVR体験の特徴

項目内容
利用機器スマホ・タブレット・PC(ブラウザで閲覧可)
導入コスト(閲覧側)0円(アプリ不要)
主な操作方法スワイプ・ピンチ操作・画面タップで移動
利用対象者年齢問わず、直感的に操作可能

案内がなくても「わかる空間」にできる

音声やテキストのガイドを埋め込める
3DVRでは、特定の場所に「ここをタップすると説明が表示される」といった案内を組み込むことができます。これにより、常駐スタッフがいなくても施設の使い方や見どころを自然に伝えることができます。

見せたい順番で案内できる
一部の3DVRプラットフォームでは、視聴者の動きを誘導するように「おすすめルート」を設定できます。これにより、イベントスペース→休憩所→展示物といった順路を示すことができ、施設の意図に沿った導線がつくれます。

来場につながる使い方もできる

「行ってみたい」を後押しできる
映像だけでは伝わりにくい空気感や距離感が、3DVRではリアルに体験できます。「思ったより広い」「バリアフリー対応されている」といった発見が、来館意欲につながります。

学校や地域団体の下見にも役立つ
団体利用の場合、「どのくらいのスペースがあるか」「入口やトイレの位置はどうか」などを事前に確認できると、担当者側の準備もスムーズです。視察前の共有資料として活用されている例もあります。

導入して終わりじゃもったいない

便利そうに見える3DVRですが、実際には「入れたまま活用されていない」というケースもあります。このセクションでは、運用やコスト面で起こりがちな課題を整理しておきます。

撮影や更新に手がかかることもある

撮影には専門機材が必要になる
高品質な3DVRコンテンツを制作するには、360度カメラやレーザースキャナーなどが必要です。また、室内の光量や構造によっては、撮影スキルも求められます。

更新が面倒になりがち
施設内の配置や展示内容が変わった際、撮り直しが必要になる場合があります。これを怠ると「情報が古くて誤解を招く」といった事態に。定期的なチェック体制も含めて、運用設計をすることが大切です。

コンテンツが埋もれてしまうリスクもある

リンクが目立たないと存在自体が知られない
3DVRコンテンツをせっかく作っても、Webページの奥に埋まっていたり、紙のパンフレットに掲載がなかったりすると、利用される機会が減ってしまいます。

現地で使えるようになっていないことも多い
館内にQRコードや端末が設置されていないと、「現場で見られない」という状態に。利用者がその場でアクセスできる環境(Wi-Fi・掲示案内など)を整えておく必要があります。

継続運用の仕組みが鍵になる

担当者が変わると運用が止まりがち
人事異動などで担当者が変わった際、「前任者しか仕組みを知らない」といった理由で使われなくなることがあります。マニュアルや引き継ぎ資料を整えておくことも大事なポイントです。

「作って終わり」にならない工夫を
たとえば、年に一度の施設点検に合わせてコンテンツを更新する、イベント開催時にSNSやWebページで3DVRを使った告知を行うなど、日常業務に組み込む形での運用を考えると長く活用しやすくなります。

無理なく始める3DVR導入の手順

3DVRを取り入れたいけれど、いきなり大がかりな仕組みはハードルが高い。そう感じる方も多いはずです。ですが、導入のスタートはもっと身近なところから切れます。ここでは、施設の規模や予算に合わせたはじめ方と、制作方法の選び方を紹介します。

小さな取り組みから始める

1室だけの撮影でも効果はある
3DVRというと大規模な施設全体を撮影するイメージを持ちがちですが、まずは「1部屋」「1コーナー」だけをVR化するだけでも十分な効果があります。たとえば会議室、展示室、ギャラリーの一角など、利用頻度の高い場所から始めることで、利用者との接点をつくれます。

イベント単位での活用もできる
常設展示に限らず、期間限定のイベントや企画展示などをVRでアーカイブしておくという方法もあります。現地に来られなかった人に届ける手段として活用できますし、次回開催時の参考資料としても使えます。

少人数体制でも管理しやすい範囲から
スタッフが少ない施設では、あらかじめ撮影範囲を絞ることで、日常業務への負担を抑えつつ運用できます。予算規模や利用目的を明確にしたうえで、段階的に範囲を広げていく方法も選べます。

制作方法の選び方とコストの目安

外注と内製、それぞれのメリット

項目外注内製(自作)
初期費用やや高め(数十万円〜)カメラ機材次第(10万円前後〜)
専門性高いクオリティを任せられる機材やソフトの習熟が必要
継続性更新時も依頼で対応自分たちで随時対応できる
向いているケースはじめての導入、広範囲撮影小規模施設、情報更新が多い運用

こんな時は外注が合っている

  • 施設紹介の完成度を高く保ちたい
  • 撮影〜編集〜公開までをまとめて任せたい
  • 専門的な案内コンテンツを含めたい

こんな時は内製でも十分対応できる

  • 小さな展示や部屋の紹介をしたい
  • 自分たちで何度も更新したい
  • SNS用のショート動画も同時に作りたい

費用の目安感
外注制作では、1施設あたり30万〜80万円程度が相場となるケースが多いです(内容によって上下します)。一方で、360度カメラ(例:RICOH THETA)とPC編集環境を揃えれば、初期費用10万円前後で自作も可能です。

運用でつまずかないために気をつけたいこと

導入して満足してしまうと、せっかくのコンテンツが見られないまま埋もれてしまいます。このセクションでは、使われる3DVRにするための視点を整理します。

見る人の視点で動線を考える

どこからどう見せるかを考えるのが大事
施設全体を撮影する場合でも、どの入り口から入り、どこに進むかをきちんと設計しておかないと、視聴者が迷子になります。現地に訪れる前提で考えるなら、実際の動線と同じ流れで進める構成にしておくとスムーズです。

表示される内容も場所と連動させる
特定のエリアでだけ表示されるテキストや画像、音声案内などは、意味が通じる場所に配置されていることが前提です。どのタイミングで何を見せたいかを最初に整理しておくことで、後からの修正も少なくて済みます。

視聴環境を考慮した設計をする

スマホ利用を前提にしておくと安心
実際の利用者の多くはスマートフォンで3DVRを見るケースがほとんどです。そのため、画面サイズや通信環境、操作性まで意識した設計が求められます。

事前にチェックしておくべきポイント

チェック項目内容
通信環境公共Wi-Fiが安定して使えるか
視聴端末スマホ横向き操作でも快適か
リンク導線QRコードなどからすぐアクセスできるか
案内サポート館内のどこに使い方が提示されているか

他のコンテンツとの連携を前提に考える

3DVR“だけ”で完結させない
映像内に情報を詰め込みすぎるよりも、現地にあるパネルやパンフレット、展示物と連携させることで、体験が広がります。「ここに関する詳しい解説は現地で確認を」などの誘導も効果的です。

WebサイトやSNSとの組み合わせで使いやすさアップ
3DVRの入り口は施設内だけにとどまらず、WebサイトやSNSでリンクを共有したり、イベント告知と連動させることもできます。更新情報と合わせてVRコンテンツを紹介することで、リピーターを増やす導線にもなります。

名古屋市市政資料館の3DVR活用例

3DVRは「実際に使われているのか?」という疑問に対して、確かな答えを示せる事例がいくつか存在します。ここでは、公的な施設として事実確認ができている名古屋市市政資料館での取り組みを紹介します。

文化財施設の魅力をオンラインで届ける仕組み

歴史的建造物の中を3Dで自由に見学できる
名古屋市市政資料館は、大正時代に建設された重厚なレンガ造りの建物で、国の重要文化財に指定されています。現在は名古屋市が管理する施設として一般公開されており、司法関連の展示資料や法廷の再現展示なども見ることができます。

この市政資料館では、建物内部をMatterportで3DVR化したコンテンツが公式サイトで公開されており、来館前にPCやスマートフォンのブラウザから自由に閲覧できるようになっています。

  • 導入内容:Matterportによる館内の3Dスキャンとオンライン公開
  • 対応端末:スマートフォン・PC(ブラウザ閲覧)、ゴーグル不要
  • 目的:来館前の情報提供、遠隔地からの建築・歴史文化資源へのアクセス支援
  • 公式URL:
    https://www.city.nagoya.jp/somu/page/0000105470.html

利用者にとってのわかりやすさと利便性

初めて訪れる人にも安心感がある
事前に施設内の構造や展示内容を視覚的に確認できることで、「どんな場所なのか」「どういう雰囲気なのか」が掴みやすくなります。特に年配の方や、初めて訪れる人にとって、実際に歩くように操作できるVRコンテンツは、心理的ハードルを下げる助けになります。

文化財の保存と公開を両立する工夫としても有効
重要文化財の施設は、保存や保護の観点から展示や案内に制限がかかることもあります。その点、3DVRによるオンライン公開は、現地の保存状態に影響を与えることなく「中を見せる」方法として有効です。また、建築的な細部を拡大して見られるなど、実際の見学では気づきにくい点まで体験できるのも魅力です。

管理・運用の立場から見た3DVRの価値

案内業務の軽減や、混雑緩和にもつながる
館内ガイドや受付業務が混み合う時間帯でも、3DVRを使えば「先にWebで見てもらう」選択肢が提示できます。事前に内容を知ってから来館してもらうことで、スタッフの負担も軽減されます。

教育・観光・PRの多目的な活用も可能
修学旅行や地域学習の予習ツールとして、また観光プロモーションの素材として、施設側の意図に応じて柔軟に使えるのが3DVRの利点です。PDFのパンフレットでは伝えきれない空間の情報を、視覚的に提供できます。

名古屋市市政資料館での事例は、実際の運用が確認できる数少ない日本国内の公的導入例です。公共施設で3DVRを導入しようと検討している場合、このような先行事例をもとに、実現可能性や運用の工夫をイメージすることができます。導入を成功させるには、こうした“現場で使われている設計”から学ぶのが一番の近道です。

施設を活かすのは「わかりやすさ」の設計しだい

案内がうまく届かず、使われないままの公共施設は少なくありません。3DVRは、そうした見えにくい課題を補うための実用的なツールです。特別な機材や大きなリニューアルがなくても、伝え方を工夫するだけで施設の魅力はしっかり伝わります。大切なのは、情報をどう見せるか。まずは“体験の見える化”から始めてみてはいかがでしょうか。

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