動画をどう活かすかで、Instagramの運用は大きく変わります。企業アカウントでも「伝え方」次第で、ファンを引き寄せる力を持つことができる時代。この記事では、無印良品の実例をもとに、Instagram動画を活用してブランドの“共感力”を高める方法をわかりやすく解説していきます。
ついついみてしまう無印良品動画
無印良品のInstagramを見ていると、派手な演出はないのに「つい見入ってしまう」動画が並んでいます。動画を使ってブランドらしさを届ける工夫が、しっかりファンとの距離を縮めています。
さりげない日常を映したReelsが多くの共感を集めている
無印良品のInstagramでは、生活の延長にあるような静かな動画が多く投稿されています。特にReelsでは「季節の風景」「調理の音」「店舗の陳列風景」など、商品をメインに押し出すというより、“その空気感”を映し出すスタイルが目立ちます。
たとえば、食器を使った朝食の様子を映す15秒のリール動画では、BGMではなく自然音を活かし、「暮らしの一瞬」を切り取っています。こうした動画は販売色が強すぎないぶん、視聴者の中に「自分ごと」として入り込みやすく、無印らしい落ち着いた印象を自然と感じさせています。
動画に“説明”を入れすぎないからこそ伝わるもの
無印良品のリール動画には、派手なナレーションや吹き出しのようなテキストはほとんど使われていません。あえて情報量を絞ることで、見た人の想像に委ねる余白が生まれています。
言葉で説明しすぎない分、「自分ならどう使うだろう」「これ、うちにも合いそう」といった感情を引き出しやすく、見る人にとっても“押しつけられない心地よさ”があるのがポイントです。
視聴者とつながるためのタグとコメントの工夫
無印良品のInstagramでは、投稿時のハッシュタグも特徴的です。#無印良品 や #くらしの道具 といった世界観を統一するタグに加えて、季節や行事に絡めたハッシュタグ(例:#春のくらし、#お弁当)を組み合わせることで、タイムライン上でも投稿が見つかりやすくなっています。
また、コメント欄にも一工夫があります。商品の魅力だけでなく、「皆さんのおうちではどう使っていますか?」「おすすめのレシピがあれば教えてください」といった呼びかけを添えることで、フォロワーの参加意欲を引き出し、コメントが自然と増えていく仕掛けができています。
コメント欄は“コミュニティの入口”になる
Instagramのアルゴリズム上、コメントの多い投稿はより多くの人に表示される傾向があります。ただし、それ以上に大切なのが“人の温度”です。
無印良品のコメント欄には、ファンからの使い方や感想が多数寄せられています。そこに対して返信があることで、ただの販売チャネルではなく「おだやかなやりとりの場」として機能しており、企業アカウントでありながらコミュニティ感が漂っています。
ファンづくりは“伝える”からはじまる
企業アカウントが目指すべきなのは、単なるフォロワー数の増加ではありません。見た人の記憶に残り、日常の中でふと思い出してもらえるような関係性の方が、結果としてブランドの力になります。
共感が広がる設計にするだけでInstagramは変わる
商品説明やキャンペーンの案内ばかりになっていませんか?
Instagramは“読む”よりも“感じる”メディアです。無印良品のように、まずは暮らしのなかの「小さな心地よさ」を切り取る視点に立つことで、自然と共感の輪が広がっていきます。
インフルエンサーのような“個”が企業にも求められている
個人のインフルエンサーが人気を集める理由のひとつに、“その人らしさ”があります。企業アカウントでも、それは変わりません。
投稿のトーンや動画の雰囲気が統一されていれば、アカウント全体がまるで“ひとつの人格”を持っているかのように見えてきます。無印良品が「誰が投稿しているのか」は明かさずとも、見ればすぐに“無印らしい”と感じられるのは、細部の積み重ねがあるからです。
「これ、いいな」で終わらせない導線を
見てもらうだけで終わるのはもったいない。動画の最後やキャプションで「どこで買えるのか」「他のアイデアもあるのか」をさりげなく示すことで、フォロワーは「知っただけ」から「使ってみたい」に変わっていきます。
あくまで押し売りではなく、“役立つ情報の提供”として届ける。このバランス感覚も、無印良品の投稿から学べるポイントです。
Instagram動画は届きやすい
Instagramでフォロワーに情報を届けたいとき、フィード投稿だけでは限界があります。リール動画なら、まったくフォローしていない人にも自然と表示される仕組みが整っています。
動画が“発見されやすい”理由はアルゴリズムにある
Instagramのリールは、発見タブやリール専用タブなど、フォロワー以外のユーザーにも表示されやすい設計になっています。これは静止画投稿にはない大きな特徴です。
おすすめ表示の仕組みを味方につける
リール動画は視聴完了率や保存数、シェア数などが高いと、アルゴリズムが「価値の高い投稿」と判断し、より多くのユーザーに届けられる傾向があります。
特定のハッシュタグや楽曲を使うことで、関連性のあるユーザーのタイムラインにも表示されやすくなります。
フィード投稿との違い
投稿形式 | 表示される範囲 | 拡散性 | 視覚的インパクト |
---|---|---|---|
フィード投稿 | 主にフォロワー | 低い | 静止画中心 |
リール動画 | フォロワー外にも届く | 高い | 音・動きがある |
無印良品が動画に力を入れ始めた理由
無印良品のInstagramも、かつては写真とテキスト中心の投稿がメインでした。ですが、現在ではReelsやストーリーズといった動画形式を積極的に使っています。
これはInstagram自体が動画プラットフォームとして進化してきた流れを反映したものです。商品をただ紹介するのではなく、“使っている瞬間”や“手に取った感覚”を届けるには、動画のほうが向いているという判断があると考えられます。
商品だけでなく「使われている風景」を届ける
無印良品の動画は、商品のスペックを伝えるのではなく、日常の中にその商品が自然と存在している様子を映し出しています。そうすることで、「自分の生活にも取り入れやすそう」と感じさせ、視聴者の想像を広げてくれます。
無理なく続けていくためには
Instagram動画といっても、特別な機材や大がかりな編集が必要なわけではありません。むしろスマホで撮れる手軽さが魅力です。
「うまく伝える」より「感じてもらう」ことが大事
多くの企業アカウントでは、動画=紹介・説明という印象が強いかもしれません。でも、無印良品の動画はそうした形式とは少し違います。
情報より空気感を伝える
たとえば、朝の食卓を映すだけのリール。商品名や価格は一切登場しません。ただ、湯気の立ち上る器や光の入り方を見て、「なんとなく気になる」と思わせるような演出がされています。これは“体験を先に伝える”発想です。
ストーリー仕立てにしなくてもいい
構成に悩みすぎると手が止まります。無印良品のように、シーンの切り取りを連ねていくだけでも、十分に魅力は伝わります。
撮影・編集はスマホでじゅうぶん
最近のスマートフォンは、動画撮影に十分な性能があります。わざわざ高価なカメラを用意する必要はありません。
明るさと構図に少しだけ気を配る
スマホ撮影でも、自然光を使って明るく撮るだけで印象が変わります。背景を整える、カメラを固定するなど、基本を押さえれば品質はぐっと良くなります。
編集もInstagramアプリ内で完結できる
Instagramアプリには、カット・音楽・テロップなどを簡単に編集できる機能が揃っています。これを使えば、他の編集ソフトを覚えなくても投稿までスムーズに進められます。
音や尺の設定もポイントになる
Instagramでは動画の最初の3秒が勝負です。無印良品のように“音の入り方”や“ゆったりしたテンポ”を大事にすると、離脱を防ぐことができます。
BGMの選び方も工夫する
トレンドの楽曲を使うことで再生数が伸びやすくなる場合もありますが、ブランドの世界観を壊さないように注意しましょう。無印良品では環境音やナチュラルなBGMが多く使われており、ブランドイメージと調和しています。
投稿時間や尺の目安
1本あたりの尺は15〜30秒がちょうどいいとされています。特にリールはテンポが早い流れの中で見られるので、短めの方が最後まで再生されやすくなります。
内容タイプ | 推奨尺 | 補足 |
---|---|---|
商品紹介系 | 15〜30秒 | テキストは最小限に |
雰囲気・イメージ系 | 10〜20秒 | 音と光の演出重視 |
使い方・How to系 | 30〜60秒 | テロップと動きで見せる |
Instagramツールを活用して表現の幅を広げる
Instagramには、動画編集の補助ツールがいくつか備わっています。これを使えば、投稿に個性を加えたり、見やすさをアップさせることができます。
テンプレート機能を使う
リールのテンプレートを使えば、他の人気投稿と同じ構成で自分の動画をつくることができます。タイミングに合わせてカットを入れるだけで、印象的な動画に仕上がります。
トランジションやエフェクトで印象に残す
切り替え時のトランジションや軽いフィルターを使うことで、動画のテンポが自然になります。視覚的な演出も、あくまで“自然さ”を保つのがポイントです。無印良品の動画も、過剰なエフェクトを避け、落ち着いたトーンで統一されています。
少しの工夫で見られ方は変わる
動画の中身を丁寧に作っても、それだけでは見てもらえません。Instagramのリールでは“最初の印象”や“全体の見え方”が視聴数に大きく関わってきます。
サムネイルで印象が決まる
リールのカバー画像(サムネ)は、タイムラインやプロフィール画面で目に触れる最初の要素です。ここが雑だと、どんなに中身が良くてもスルーされてしまいます。
見やすさと雰囲気をそろえる
・画面中央に被写体がある
・明るく、白っぽい色味がある
・背景に余白がある
こうした要素がそろっていると、一覧で並んだときにも自然なまとまりが出ます。無印良品のアカウントを見ても、リールのサムネはほとんどが“静止した美しさ”を感じる画面になっており、ついタップしたくなる余白と色使いが印象的です。
自動選択に頼らず、手動で設定する
Instagramではリールのカバー画像を自動で選ぶ機能もありますが、できれば手動で調整した方がよいです。冒頭の数秒から好みのシーンを選ぶか、別途画像を用意して設定することで、“プロフィールで魅せる動画一覧”を構築できます。
冒頭3秒は一番大事
リール動画の離脱率は最初の3秒で決まるとも言われています。冒頭で「あ、これ見てみようかな」と思わせることができれば、最後まで見られる確率がぐっと上がります。
はじめに結論を見せる
・使っている様子から入る
・映像に動きがあるシーンを選ぶ
・視覚的な変化や動きのある瞬間を冒頭に持ってくる
無印良品の投稿でも、最初の数秒に「手を動かしている」「料理の湯気が立ちのぼる」といった、日常のリアルな瞬間が差し込まれており、自然に動画の世界に引き込まれます。
フィードを“見た目よく”整える方法
プロフィールを訪れたユーザーがリール一覧をざっと見たときに、「ごちゃごちゃしている」と感じると、それだけで離脱されてしまうこともあります。
色味と構図の統一感を出す
・ナチュラルカラーに寄せる
・被写体の配置をそろえる(中央・左寄りなど)
・フィルターや明るさを統一する
こうした細かな統一感が、ブランドらしさとして伝わります。無印良品のアカウントを見ても、どの動画を開いても「無印らしい」と感じるのは、全体のバランスを考えながら発信しているからです。
テキストやBGMのトーンも統一する
動画の世界観を作っているのは、映像だけではありません。BGMやフォントの選び方も“らしさ”を支える大切な要素です。過度に賑やかにせず、自然な流れのBGMを選ぶことで、ブランドイメージとのズレを防げます。
投稿した動画は1回で終わらせない
せっかく作った動画、リールとして出して終わりではもったいないです。Instagramには再利用の仕組みがいくつか用意されており、同じ素材を別の形で活かすことができます。
ストーリーズで“再掲”する
リールを投稿したあと、ストーリーズで「公開しました」と伝えるだけでも、見られる可能性は大きく変わります。ストーリーズからリールへ直接リンクを貼ることで、接点が広がります。
ハイライトで動画をストックする
カテゴリー別に動画をハイライト保存しておけば、新しいフォロワーにも過去動画を見てもらえる導線になります。たとえば「使い方」「春の暮らし」「新商品紹介」などテーマ別にまとめると、整理された印象になります。
“発信する力”を作っていこう
動画はインフルエンサーだけのものではありません。企業アカウントが「自分たちらしい伝え方」を見つけることで、Instagramでも自然に届く力を持てます。
フォロワーより“巻き込む力”を意識する
フォロワー数を増やすことばかりに気を取られると、投稿が“数稼ぎ”になりがちです。大切なのは「このアカウントをまた見たい」「あの投稿を誰かに見せたい」と思ってもらうこと。
無印良品のように、商品を中心にしつつも“紹介しすぎない”ことで、共感を誘い、リピート閲覧や保存につながる投稿を生み出しています。
自社アカウントでも信頼はつくれる
広告やタイアップを通じて一時的に認知を得ることもできますが、ブランドの本質を知ってもらい、信頼してもらうには“日々の発信”が一番の近道です。
Instagramを通じて「らしさ」や「価値観」が丁寧に伝われば、自然とフォロワーとの距離が縮まり、購買行動にも影響を与えます。
続けることでブランドそのものになる
発信が積み重なれば、そのアカウントは“ブランドの顔”になります。動画という形で思いを届け続ければ、「企業だから届かない」という壁は自然と消えていきます。
動画投稿に特別な才能や予算は必要ありません。Instagramの中に、自社の魅力を形にする場はすでに用意されています。あとは、始めるだけです。
信頼される発信に気を配ろう
どんなに素敵な動画を投稿していても、ちょっとした対応のズレが積み重なると、フォロワーの信頼はあっけなく離れていきます。Instagram運用では、見せ方だけでなく“見られ方”にも気を配る必要があります。
意外と見落とされがちな“炎上のきっかけ”
SNSでは、意図しない表現や言葉づかいが誤解を生むことがあります。過激な投稿でなくても、ちょっとした雑な言い回しや説明不足が、企業アカウントの印象を悪くしてしまうこともあります。
タグや表現の選び方に注意する
トレンドに乗ろうとした結果、不適切なタグや話題に触れてしまう例は少なくありません。投稿前には「誰かを不快にさせていないか」「無理に流行を追っていないか」を客観的に見直すことが大切です。
ユーザーからの指摘にはすぐに対応する
間違いや不備を指摘されたとき、「スルー」するのが一番の悪手です。たとえ小さなミスであっても、早めに対応し、必要であれば修正・説明を行うことで、信頼を保つことができます。
コメント欄やDMは“放置しない”
投稿にコメントやDMが来ているのに、何も反応がない状態が続くと、「このブランドは一方通行だ」と受け取られてしまいます。
コメント対応は“丁寧さ”がすべて
全件返信までは必要ありませんが、内容によっては丁寧にリアクションするだけで、ユーザーの印象は大きく変わります。絵文字だけのリアクションでも「見てくれている」という感覚が伝わります。
DMでのやりとりは慎重に
特に購入前の問い合わせや意見などが届いた際には、丁寧な文章とタイムリーな返信が重要です。テンプレート対応だけでなく、少しでも「人の気配」を感じる言葉づかいを心がけましょう。
ストーリーズの扱い方にも“そのブランドらしさ”が出る
ストーリーズは投稿よりカジュアルな分、企業のトーンがにじみ出やすい場所です。雑になりすぎたり、スタンスがぶれると、「普段の投稿と違う」と感じさせてしまいます。
一貫したトーンで信頼感を積み上げる
投稿・リール・ストーリーズすべてを通して、同じトーン・世界観を保つことが、ブランドの信頼感につながります。急にくだけた言葉づかいをしたり、投稿と矛盾することを伝えないように注意しましょう。
無理に“人っぽさ”を出そうとしすぎない
親しみやすさを出そうとして、言葉づかいや演出が過剰になると逆効果です。飾りすぎず、ブランドに合った距離感で発信することが、長く続けられる鍵になります。
企業アカウントも、伝え方しだいで変わっていく
動画で何かを伝えるとき、「うちには大きな制作チームがないから」「社内で発信が得意な人がいないから」と感じてしまうかもしれません。でも、実は特別なスキルより大事なのは“姿勢”です。
動画はSNS戦略の“主役”になれる
Instagramでは、画像よりも動画の方がリーチしやすく、感情にも訴えやすいのが特徴です。リールをうまく使えば、フォロワー以外にも届きやすくなり、投稿の拡散力が高まります。
動画がもたらすメリット
項目 | 内容 |
---|---|
滞在時間 | 動画はユーザーの滞在時間を延ばしやすい |
発見性 | リールなら非フォロワーにも届く |
表現力 | 音・動き・空気感が伝えられる |
「SNS=写真投稿」というイメージに縛られず、動画を中心に発想を切り替えると、発信内容の幅がぐっと広がります。
真似できるのは“技術”ではなく“姿勢”
大手ブランドがやっていることを見て、「あれはうちには無理」と感じる必要はありません。むしろ見習いたいのは、投稿ごとのクオリティではなく、「一貫した発信スタイル」「丁寧な言葉づかい」「無理のない更新ペース」といった、姿勢そのものです。
無印良品の例に学ぶ発信の考え方
投稿のすべてが特別な企画ではなく、日々の暮らしの一瞬を丁寧に映しているだけ。高価な機材や特別なスキルではなく、「このブランドはこういう考え方で発信している」という軸が、フォロワーに安心感を与えています。
1本の動画が“関係性”をつくるきっかけになる
たった15秒の動画でも、「感じのいい投稿だな」「ちょっと気になるかも」と思ってもらえれば、それは信頼の入り口になります。
動画が見られる → プロフィールを訪れる → 他の投稿を見る → フォローする → シェアする、という流れが自然に生まれることで、企業アカウント自体が“ブランドの顔”として育っていきます。
まずは、ひとつの投稿から。Instagramに並ぶ動画のなかで、“自分たちらしい”やり方を見つけることが、長くファンとつながるコツになります。